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生きる力をくれた本

昨年末に自宅で転倒し、肋骨を骨折して、明日でちょうど、ひと月になる。怪我をしてから3週間目の診察では、レントゲンの画像で、割れた骨の部位がウソのようにきれいにつながって、もう痛み止めの薬も飲まなくて大丈夫になった。まだ右の脇の周辺は痛むけれど、それでも、だいぶ動けるようになって家事もできるようになった。

二日前、久しぶりにひとりでバスに乗り、高尾駅前で降りて、花粉症の薬を処方してもらいにかかりつけの医院へ行った。その後、駅前の書店にも立ち寄った。そこで、かつて読んだことのあった単行本が、文庫本で復刻されて平積みになっていているのを発見し、思わず手に取った。

「ミニヤコンカ奇跡の生還」

初版は1983年の発行だ。最初に読んだのは、確か1986年頃だから、もう25年も前になる。著者の松田宏也(ひろなり)さんは、中国チベットの7,556メートル峰の登山で遭難し、仲間を失い、自分の両足を失い、両手の指も全て失い、奇跡の生還を果たした人だ。当時私は、なんという困難な体験をした人だろうかとこの本に勇気づけられ、この本から生きていく力をもらったものだった。

その時読んだ本は、当時住んでいた杉並の中央図書館で借りたものだった。その頃は、本も自由に買えないような生活で、近くにあった図書館をよく利用していた。

松田宏也さんの手記で最初に読んだのは、この『ミニヤコンカ奇跡の…』ではなく、『足よ手よ 僕はまた登る』というタイトルの本だった。生還を果たした後の闘病生活やリハビリを中心としたことが書かれていたと記憶している。最初にこれを読んで感動し、その後、同じ棚に並んでいた、この『ミニヤコンカ奇跡の生還』も続けて借りて読んだのだった。

本格登山などしたこともない当時の私には、登山の専門用語も出てくるこの本は少し難しかったが、克明に描かれている遭難の様子を頭でなんとか理解しようとし、厳しい雪山を思い浮かべたものだった。

新しく買ったこの文庫本、奥付を見ると、発行の日付は2010年年11月15日となっている。昨年暮れに出ていたのだった。年末は忙しくて本屋さんに立ち寄る時間もなかったっけ…

想像を絶する体験の記録に再び目を通すことができ、感無量の私は、再度、この本に勇気づけられたのであった。自分の骨折体験など、松田さんの体験に比べれば、なんと小さなことであろうか。

生きるの死ぬのという問題ではない私の体験を比較すること自体間違っているが、しかし、この小さな骨折体験も決して無駄ではなかったと思う。体験したことで、骨折の痛み…というものを“実感”することができたのだ。これは、ある意味、収穫だと思う。(喉元過ぎれば…なんとやら)

松田宏也さん、今はどうしておられるのだろうか…

『彼は「奇跡の生還」のつづきを書くのではないだろうか。』と、写真家の阿部幹雄さんという方が巻末の解説に書いている。

『足よ手よ 僕はまた登る』こちらも、久しぶりに読んでみたい気がする。

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松田宏也・著「ミニヤコンカ奇跡の生還 」ヤマケイ文庫

by osanpocamera | 2011-01-28 19:28